Triangler 別冊 バニー

ベッドの上に、うさぎが座っていた。

正確に言うと、うさぎの耳をつけたなまえが体育座りで小さく丸まっていた。
SAIがシャワーに発つ前までは、いつも通りラフなスウェット姿だったはずだ。それがどうしてこんなことに。
理由を尋ねようとするも、口からは「な、え、う」という断片だけが漏れて終わる。脳との接続が完全におしゃかである。
「……七海君に、ほら。色々やってもらったから、その、お返しのやつ」
色々。
人肌に温められたローションへ、ガーゼが浸される様を回想して、SAIはその場に硬直した。なまえが満足したのであれば、と自分を慰めてはいるものの、あの快感は男としての尊厳が揺らぐレベルで衝撃だった。とてつもなく良かった。良すぎて、もうごめんだ。
そういえば、事後。痙攣する薄い腹筋を撫でさすられながら、彼女に何かを問いかけられた記憶がある。頭が回っておらず、随分ぼんやりした会話であったが。どうやらあれは「等価交換」の約束だったらしい。
こんなリクエストしただろうか? と自問自答するも、当然わかるはずはない。全身麻酔から覚めた直後は、朦朧とした意識で全ての質問に脊髄反射で答えてしまうというが、それに近い何かだ。
何はともあれ、予期せぬサプライズであることへ変わりはなかった。
「よくっ、そんなの、手に入ったね……」
縮こまっているせいでよく見えないが、ボディースーツに目立つシワはない。なまえのプロポーションへ綺麗に沿っているようだった。
「……売ってなかったから、つくってもらったの」
「えーっと……」
それを請け負ったであろう人物が脳裏をよぎる。
「打ち上げ前のパーティーで一回採寸もしてもらったし、杠ちゃんにこっそり頼んで。ちゃんとお代は払ったよ! 世界のユズクロだもん。気持ち分上乗せで」
問題はそこではないのだ。膝をつきたい気持ちを堪え、問いかける。
「なっ、何にも、言われなかった……?」
「忘年会の余興で使うって無理やり誤魔化した」
察しの良い凄腕デザイナー兼パタンナーは、本来の用途に気づいていそうなものだが。
そもそも忘年会でバニーガールの衣装が必要ってどういう訳だ。今のご時世、それが上司からの進言であろうものなら、セクシュアルハラスメントですぐさま降格処分である。
「……で、七海君はいつまでそこにいるの」
立ち尽くしながら視線を彷徨わせるSAIへ、うずくまったなまえが声をかけた。
「このままおやすみする? 私は……まあ、それでもいいかなーって思うけど」
ぷい、とそっぽを向くが、長年の仲だ。これが彼女の照れ隠しであることは容易く理解された。彼も、据え膳を放って就寝できるほど修行僧めいてはいない。
「と、りあえずっ……」
よく見せて。
しんとした空間、ベットの軋む音が響いた。

どうにでもなれ、の姿勢でごろんと転がったなまえを凝視し、SAIは思わず生唾を飲み込んだ。
さすがの杠ブランドである。ぴたりとしたスーツは、くびれまでくっきり。妙なもたつきは一切ない。両脇があえて縫い合わされておらず、編み上げのリボンで締める仕様になっている所以だ。ストーンワールドの女性陣は、その手のデザインを身に纏っていることが多かったため、名残かもしれない。
四分の三カップの胸元は、谷間が美しくIの字を描いている。つけ襟とカフスは繊細なレースがあしらわれ、くるみボタンやチラチラ覗く真っ白な尻尾まで含め、非常に芸が細かい。
手作業で編まれたのだろうか。レース製のガーターベルトに繋がって、網ストッキングに包まれた足がすらりと伸び、ベッドへ放り出されていた。
何より、うさぎの耳を模したカチューシャが、少し頭を揺らすだけでもぴょこぴょこと跳ねる。
端で丸まっていた時から、全体像をなんとなく想像していたが、それをゆうに超えるクオリティだった。「……触っていいよ」と、なまえから許可が出るも、どこからどうすればいいのか決められないくらいには。とてもじゃないが崩せない。指がわきわき空を掴む。
「あっ、う、ぐ」
「もー! そーんな生娘みたいな反応して! 私だって恥ずかしいんだからねっ」
ついに痺れを切らした彼女が起き上がり、彼の手をむんずと掴んだ。そのまま自身の胸元へ押し付ける。
「じょっ、情緒っ」
たまらず声を上げるが、指先越しに心臓の跳ねる音が伝わってくると、言葉に詰まる。強気な視線と裏腹に、そのリズムは速く、明らかに緊張している。
「……ね?」
「う、ん……ごめん」
促された謝罪に「うむ」と返したなまえは、改めて両手を肩の高さに掲げ、降伏姿勢をとった。
「今日は、七海君の言うことなんでも聞くって決めてるの。……何したい?」
選択肢の多さに一瞬ひるみかけ、しかしSAIの頭の中に初夜の彼女の台詞がほわんと浮かび上がる。「久しぶりだからゆっくりして」と恥じらうなまえへ「ほ、本当に久しぶり?」と彼が聞き返したことが発端である。曰く「バーカ!」と。加えて、「他の人に抱かれながら七海君のことを考えるくらいなら、一人で発散するわ!」と。
ならば。
「一人っ、で……してみて」
SAIの言葉へ、なまえは「……へ?」と気の抜けた声をあげた。

ベットボードに背中を預けた恋人が、おずおず自身の胸元へ手をやった。肩紐がないのを不思議に思っていたが、生地裏が滑り止めになっているらしい。
体横の編み上げリボンが半分ほどほどかれ、布と体に隙間ができる。小さな吐息と共に、あばらまで布地がめくられる。露わになった膨らみが締め付けから解放、重力に従って震えた。向かった左手が、ささやかな力で脇下から胸下のラインをさする。
自分でする時も触るんだ。図らずもSAIが開発途中のその場所へ、彼女が真っ先に手を伸ばしたことで耳が火照った。彼の視線に耐えられず、伏せ目がちに顔を背けたなまえは、呼吸の中に時折甘い声を混ぜる。「ん」と鼻にかかった響きが聞こえるたび、SAIの背筋がぞわぞわと痺れた。
しばらくして、右手がそっと持ち上がり太ももの内側を撫でまわす。秘部まで到着すると、スーツの上から中指で擦るのが見えた。その指がとある一点で止まる。
あまりこの行為に慣れていないのだろう。全体的に動きが拙い。彼がする時の流れを真似ているようにも思える。
股関節とスーツの隙間から、遠慮がちに指が差し込まれる。透け感のないしっかりした生地が、その分だけ膨らんだ。直接見えるのとはまた別種のいやらしさ。時折かき出される指はしとどに濡れており、ベッド脇のライトを反射して光る。スーツの内側はすでにドロドロになのだと思うと、SAIの下半身へは行き場のない熱がたまる一方だった。
まずい。こちらからリクエストしたにも関わらず、早々に限界が近い。
ベッドの上を四つん這いで移動し、背中側に回り込んで彼女の身体を抱え込む。
「……当たってる」
なまえが、自身のお尻に擦り付けられた硬いそれを示すと、SAIは「あんなのっ……見せられたら」と焦りながら呟いた。想定の数倍目の毒であった。
彼女の右手に重ねて、改めて秘部の布地に二人分の指を差し込む。そこは艶かしくぐっしょり湿っていた。
「……覚えてっ、みょうじさんはここをこうすると」
「あっ」
今更焦らす必要もないだろうと、陰核の左側面へ触れ、優しく引っ掻く。彼女の好きな場所は、何回も肌を重ねるうち明らかになった。無意識かもしれないが、この部分を弄る時は反応がいい。声を抑えがちななまえが、毎度小さな嬌声をあげてしまうくらいには。
「あと、ここも」
皮との境目をフェザータッチでなぞる。ここを剥いて普段隠れている場所をこしこし弄るのは、今の彼女には強すぎるらしかった。この程度の刺激が最もちょうど良く快感を与えてやれる。喉をそらし、逆手にした腕でSAIの服を掴むのが可愛らしい。
「ほら、ぷくってしてきた」
人差し指と薬指で外側を揉みながら中指を豆粒のてっぺんへ擦り付け圧迫する。根元付近を膣口からすくった愛液でぬるぬる往復すれば、なまえは彼の胸元に後頭部を押しつけた。うさぎの耳がSAIの頬をぺちぺち叩く。
「……なんで言うの、えっち」
「あ、みょうじさんにしか言わないってばっ」
扇状的なコスプレ姿を自分から披露しておいて、こちらが一方的に「えっち」というのはいかがなものか。
くにくにとウィクリーポイントに触れながら彼女の悩ましい声を聞いていたSAIは、ふと物欲しげにこちらを見上げる視線に気がついた。意図を察し、空いている腕でおとがいを上げキスをする。若干無理な体勢のせいで「んぐ」声が響いた。
彼女が差し出した舌を吸いながら、右の薬指を熱い蜜壺へ差し入れる。とろとろで気持ちがいい。口蓋をなぶると、中がきゅうと締まった。彼女もいいのだ。
指を増やし、ゆっくりと中をかき回す。二本の腹で腹側の浅い部分を柔く押す。バラバラに動かしてわざと水音を鳴らせば、唇の隙間から「あぅ」と喘ぎが溢れた。
SAIの指はたとえば龍水のように男性的にゴツゴツしてはいないが、関節が大きく、細身の分骨が浮き出ている。また、長い指で彼女の奥まで触れることができた。届いた場所を小刻みに揺らし、トントンと優しく叩く。
母指球にまで愛液がべっとり伝ったことを確認し、窮屈なスーツの中でもぞもぞ手のひらを動かして、性器全体を圧迫するように上からさする。豆粒がその刺激に巻き込まれ、彼女の中が敏感に蠢いた。そのままあっさり達してしまう。感じ入る声を聞きたい、顔を見たい、その瞬間を口内の粘膜で察したい。各々の気持ちがないまぜに押しあい、今回は三番目の選択肢が主導権を得る。
ゆっくり唇を離せば、どちらのものか分からない唾液が線を引く。首筋に汗ばんだ額を押し付け、呼吸を整えるなまえの後頭部を撫でていると、「もー」と悔しそうな呻きが聞こえた。

先ほど彼女がもたれていたベットボードに今度はSAIが背を預けることとなった。なまえの「私もしちゃる!」という強い提案ゆえである。
シャツを脱がせ、さらにスラックスの前をくつろげさせ、恋人の装備を大方剥いだ彼女は満足げに微笑んだ。SAIの太ももをさすりながら下腹部に顔を寄せ、すっかり兆したそれへ手を伸ばす。先走りで先端付近は濡れており、それを全体へ広げるように擦る。こちょこちょと裏筋付近に触れ、ふうっと息を吹きかけると「う」と彼が呻いた。
会陰にちゅう、キスをする。「ひっ」と声をあげたSAIと視線を合わせ、べ、と出した舌を根本から沿わせる。陰毛が絡んで、唇に張り付くも、さして気にする素振りはない。優先順位が低いとした方が正確だろうか。
優しく竿を撫でながら、右手はふぐりをくすぐる。痛くないように細心の注意を払って片側の膨らみを押す。
顔を赤らめながらも、こちらを凝視するSAIになまえの心臓が痺れた。先刻まで散々自分を責め立てていた男に、この表情で身を任されていると思うだけで、甘い想いが脳を満たすのだ。
裏筋をチロチロ舐め上げ、カリ首のくぼみ部分へ、ぐるりと回すように舌を這わせる。
SAI本人がどう思っているかは別として、彼女はやや黒ずんだそこに常々情欲をかき立てられている。経験が多いほど、摩擦によってメラニンが増えるという話もあるが、彼の場合は母方の血も関係しているのだろう。
また、インド滞在時、スパイス臭なのか、衛生的な感覚の違いなのか、玉ねぎやニンニクを常食する生活のためか、強い体臭を持つ人物と出会うことは少なからずあった。ある種のお国柄である。一方、SAIに対してそのような感情を持ったことはない。が、この陰茎に対してのみでいうと、やはり独特の臭いがある。にも関わらず、嫌じゃない。むしろ、ソワソワ落ち着かない。
絆されているなあ、などと他人事のように感じながら、なまえは舌先で鈴口をツンツンつついた。とめどなく溢れる先走りで竿を支えるのは彼女の指はドロドロだ。与える刺激一つ一つに腹筋を振るわせ反応するSAIが可愛らしく、長いこと焦らしてしまった。
顎が疲れてきたため、休憩も兼ねてへそ周りと内腿にキスをする。萎えないよう、片方の手で睾丸を転がし、彼が油断したタイミングを見計らって口に含んだ。柔く口蓋と舌で圧迫し、唇に沿わせて遊ぶ。
「ひあ、っぅ」
堪え切らず喘いだSAIが、慌てて口元へ手をやった、声を聞かせてほしいと頼む度、「男なのにっ、おかしいよっ」と断られてしまう。今日もその意思は健在のようだ。
若干不満のなまえは、彼が一番感じる部分へ親指を這わせた。割れ目に爪を立て、溢れる体液をぬるぬる弄る。それらをぬぐうように端からゆっくり舐めていくと、期待したのだろう。亀頭全体ががふるふると震えた。
にんまり。かぷりと口内へ迎え入れる。頬の内側に擦り付けてなぶり、カリを唇に引っ掛けながら吸い上げると「あっ、だ、あぅ、ひ……んっ」と、首を振りながら彼が告げる。足ぐせの悪いSAIが、この状況でも下半身を極力動かさず堪えているのは偉い。よしよしとご褒美をあげたいところだ。
心の中で腕まくりをし、右手で陰嚢を揉みながら、左手で竿、さらにその親指が裏筋を刺激するようにして摩擦する。当然舌は敏感な先端を甘やかす。弱いところを一度に襲われたSAIは、声を我慢する余裕なく吐精した。口の中が独特な風味と粘性で侵される。この味や臭い自体は決して得意ではないものの、彼のものだと思うとやたら愛おしく思えるのが不思議だ。サイドテーブルに常備されたウェットティッシュにそっと吐き出し、なまえは達した直後のSAIを見つめた。
サービスのつもりで、いまだ敏感なそこをチロチロ舌先で刺激しながら、出しきれなかった白濁を吸い取る。「あっ、あっ」と首を振って力なく抵抗していた彼が、熱のこもった瞳に恋人を映した。

SAIは、なまえをベッドに横たえ、大きく足を開かせた。覆い被さる格好で太ももの内側に陣取ると、特等席のように恥ずかしい場所がよく見える。
編み上げを片側だけ解ききり、股ぐり部分に余裕をつくる。布地を引っ張ると、とろけた秘部がようやく晒された。彼のものを責めながらも興奮していたようで、入り口がひくひくと反応している。若干挑戦的な眼差しを含めて最高にそそる。
「さっき教えたやり方、自分でしてみて」
「うえっ⁈」
「だって今日はっ、なんでも聞いてくれるって」
「…………ぐう、言った」
打って変わった、墓穴! の顔で、数秒ほど静止していたなまえは、恐る恐る手を伸ばし、そっと陰核に触れた。彼が先ほどじっくり弄んだそこは赤く膨らみ、愛液をはじいている。
彼の台詞と指の動かし方を想像しながら、左側の側面をそっとなぞる。続いて裏側の根本部分。短く揃えられた爪でカリカリ引っ掻けば甘い快感に彼女の背筋が痺れた。
「んっ」
思わず声も漏れる。SAIの視線がそこに注目しているのが一番緊張するのだ。
「みょうじさんのオナニー可愛い」
「なっ、このっ!」
直接すぎる責め句に、彼女が照れ九割で憤慨する。しかし、彼のおねだりを聞くべく指はさりさりと弱い部分を擦り続けている。
「そのまましてて」
囁き、彼女の腰をつかんでぐるりと反転させ、四つん這いにする。右手は秘部のため、三点で支えるのは難しくお尻を突き出し膝と肘で身体を支える格好。後ろから見ると、その姿はますます卑猥だった。四足動物のウサギにはぴったりの姿勢と言えるかもしれない。
背中から抱きしめるようにして、亀頭を入り口にあてがい、徐々に割り入る。臨戦状態で誰かと比べる機会などこれまで当然なく、自身のサイズ感など知るはずもないが、単純に身長に比例すると考えれば、小さいとは言えないはずである。現に彼を受け入れているなまえは十分に慣らさないとなかなかにしんどそうであった。
しかし、前戯に時間をかけすぎてとろとろになった場合、彼女の子宮が下がり、口へ先端が当たってしまうこともままある。なまえの言う「七海君のは長いよね」という評価の要因はここにあるのかもしれない。
そういえば、とお留守になっていた胸へ背後から手を伸ばした。脇の下をやわやわ触り、わし掴むように全体を揉みしだく。わざと頂きを避けて指を転がすと、太ももがぴくぴく跳ねる。
背骨に沿って舌を這わせ、のけぞったタイミングできゅっと蕾をつまむ。親指と人差し指の腹で挟みながら捻るように転がすと、声にならない悲鳴と一緒に中がうねった。なまえの足がブルブルと震え、くたりと崩れる。勃ち上がったままのSAIのものがずるりと抜ける。
「……ごめんっ、もう少し付き合って」
乱雑に置かれた枕を、シーツに沈んだ彼女の腹下へ押し込む。足の隙間に自身を侵入させ、くちゅりと音を立てながら再度内部に割り込むと、なんなくSAIを迎え入れたそこは真綿のように彼を包み込んだ。
荒い呼吸をする彼女の背中へ覆い被さるよう身体を密着させる。体重がかかり、逃げようとしても逃げられない。シーツを握りしめて震える手首を掴む。
息を吐き出しながら奥に進むと、コリコリとした感触と弾力を併せ持つ部分に先端が触れた。指でもたっぷり愛撫したところ。腰使いに関しては正直全く自信がないため、その正体に思い当たる節はありつつも振動させるテクニックはない。とりあえずやわやわ押し込んでみる。
ふと、恥骨下の枕を引っ張って揺らすと、物理的になまえの腰が小刻みに動き疑似的なピストンとなった。
腰を前後するたびにカチューシャの耳が揺れて、本当にそういうものと行為に及んでいる気すらしてくる。彼女が喘ぎというよりもうめきに近い声を漏らす。何かから逃げるように腕が動きたがる。それを押さえつければ、膣内のひだが蠢き、先端をちゅうちゅうと覆った。SAIは内頬を噛んで刺激に耐える。
「う、んぐ、や、やっん、ん、っ!」
虚に甘い声をあげていたなまえが、電気が走ったかのように再度脱力した。一際強い締め付けに耐えきれず、流される形でSAIも達する。吐精しながら竿全体を絞られ、イキながらイカされそうになる稀有な体験をすることになった。

「……みょうじさん、大丈夫?」
体勢的にも気持ち的にも無理させてしまったのではと、仰向けで寝転んだSAIはうつ伏せで震えている彼女のあごをすくった。なまえの半開きの口からよだれがこぼれている。目は潤みきっており、止められなかった水滴がシーツに染みていた。桜色の唇からは「っ、あっ」と、小さな喘ぎ。まだ快感の余韻が続いているのかもしれない。
「……なん、か……つっ、よ、強くて……」
おそらくあれは奥で達したのだと彼女が告げ、次の瞬間「ぎゃ!」と吠えた。
「あっ、足つった!」
「えっ、えっ! えっ⁈ どこっ」
「向こうずねっ」
「すね⁈」
「の裏!」
「最初からふくらはぎって言いなよっ」
仕方なく、SAIはだるい体を起こした。彼女の膝を軸にして足裏へ手をやり、該当箇所を伸ばしてやる。尾骶骨に添えられた真っ白な尻尾を揺らし、なまえが「あてて」と情けない声を出す。ムードも何もあったものじゃない。
もう大丈夫、の宣言で解放すると、白い足がシーツに転がった。
改めてSAIもベッドへ横になる。二人の視線が絡み、同時に声をあげて笑う。
「全然っ、締まらないっ」
「もー、完全同意。ごめんってば」
なまえの白く細い指が、そっと彼のそれと重なった。水かきを探るようになぞり、柔い力で握られる。
「ね、ちゃんと七海君のリクエスト通りにできてた?」
「できてた。すっごくっ……よかった」
このクオリティが毎回担保されるのであれば、多少男の矜持が揺らされても。なんて、情けない思考を巡らせてしまうくらいには。
SAIの回答へ、満足気なうさぎの耳は縦に振れた。