鬼滅プラス 夜明けにつぐ

人の気配で眼を覚ます。瞼の重さに、嗚呼まだ自分はまどろんでいる最中なのだと、どこか冷静に考えながら、「もしもし」と耳馴染みのある声に起床を促される。
正面には、高い天井。視界の右端に、ひらひら舞い踊る蝶の羽織。
「おはようございます。二日間眠りっぱなしだったんですよ。倒れる前のこと、覚えていますか?」
返事をしようと口を開けば、声の代わりに乾いた咳が飛び出した。背中をさすられ、落ち着いた頃に口元へ茶碗をあてがわれる。
「水を飲みましょう。頭がすっきりします」
縁の水分で唇を湿らせながら頷いて、ゆっくりと飲み干す。常温の液体が、体内を下へ下へと流れていく。ひりついていた喉の痛みが穏やかになり、指先、肩口、至るところの関節が思い出したように痺れ始めた。
「幸い大きな外傷はありません。ですが、血鬼術の影響がまだ抜けきっていないようです。無理せず、今日は一日休んでください」
「……血鬼術?」
「はい。状況が状況でしたから、私から説明した方が良いかもしれませんね」
空になった器を片付ける蟲柱は、口角を綺麗に上げて微笑んだ。
彼女曰く、私はとある任務を終え、鎹烏の伝令に合わせて次の仕事へ移動する途中だったそうだ。言われてみれば、確かにその記憶があり、いくつかの真新しい切り傷は、前段の鬼退治でできたもののような気がする。
しかしその道半ばで、徒党を組み、人狩りを行う数匹の鬼に襲われたという。強さの程度としては十二鬼月なんて以ての外。けれど、鬼が群れること自体めずらしく、その対応が間に合わなかったこと、また唯一異能を持っていた鬼の能力が厄介だったこと。この二つの要因が重なり、苦戦を強いられてしまったらしいのだ。
自分の身に起きたことを人伝てに聞くのは、些か不思議な体験で、私は手首の打撲痕をまじまじと見つめ唸った。
「……厄介というのは、具体的に」
「簡潔に言いますと、催淫です」
基本的に、いつも笑顔を浮かべている彼女が、一瞬眉尻を下げて、躊躇うような素振りを見せる。
「催淫、ですか?」
「媚薬、精力剤、回春剤。呼称はいくつかあるみたいですが、今回対峙した鬼の体液に、こういった薬がもたらす効果と同じ作用が確認できました。性欲増強剤を全身に浴びてしまった、と理解して頂いて差し支えありませんよ」
「……私が?」
「貴女が」
背中を冷たい汗が伝う。
「…………すみません。私が、ですか?」
「……ええ、貴女が、です」
二度の問いかけへ、律儀に返答をしてくれた蟲柱は目を伏せ、優しい溜息を吐き出した。
「本来であれば、余程の重傷でない限り私自ら付き添うことはありません。ただ、先日までの様子を見られるのは、同性とはいえ精神衛生上あまり良くないのではと思いまして。カナヲ達は貴女がここにいることを知りません」
「ご面倒をおかけしまして……有難うございます」
恥ずかしさで布団に潜り込んでしまいたい気持ちを堪えて、彼女の気遣いに礼を言う。只でさえ忙しい中、こちらの心情を察しての対応に、これ以上下げる頭がない。
「いえいえ、お礼なら煉獄さんに言ってあげてくださいな」
「……炎柱の、ですか?」
「炎柱の煉獄さんですよ」
鬼に襲われた際の記憶がすっぽり抜け落ちている私は、当然ながらどうやって助かったのかも覚えていない。頭の片隅で、おそらく第三者に救われたのだろうと勘づいていたが、まさか。
「貴女をここまで連れてきたのは彼です。隊服の前身頃がほぼ破り取られてしまっていたので、私が表で迎えた時は煉獄さんの 羽織に包まれていました。隊服の替えについては既に伝達済みですし、羽織もこちらで洗濯してお返ししましたので、気にする必要はありません。また、これ以上の詳細は控えますが、一つだけ。回復次第、なるべく早く会うことをお勧めします」
一体、どんな粗相をしてしまったのだろうか。不安と不甲斐なさで押しつぶされそうになりながら、薬湯を作りますね、と部屋を後にした彼女を見送る。どうしようもなくて何度も寝返りを打った。
枕に顔を深く埋め、先の会話を思い返す。炎の呼吸の使い手、受け継がれる煉獄家の長男。私には、陽の目を見ることがないであろう、彼への想いがある。所謂片想いというやつだ。
太陽の下を大股で歩くことは叶わない。外に出ないよう、襖を締め切って、誰にも会わず生きていく感情だ。真っ暗闇の自分の中でしか、呼吸ができない『気持ち』だ。
なんて自嘲的だろう。きっと、私の恋心は鬼の形をしている。

結論から述べれば、炎柱と再会できたのは、私が前線に復帰して三週間ほど経過した夜のことだった。
夜とはいえど、東の空が薄っすら明るい時刻。明け方近くのこの時間帯では、さすがに鬼も出歩けないだろうと、藤屋敷の門を叩いたのだ。
辺鄙な時間ゆえに休ませて頂くだけで構わないと提言するも、親切に湯を頂く。先ほど到着した別の方が湯浴みされたため、手間ではないという。正直なところ、道中で疲れきった足に熱いお湯は有難い。さらさらした寝間着の着心地も良く、存分に羽を伸ばした私は幸せな気持ちで寝室へと続く縁側を歩いていた。
少し寝て、朝食を頂こう。その後もう暫く休ませてもらって、昼過ぎには発とう。
半刻前に教えて頂いた部屋へ辿り着き、障子に指をかける。

「――久しいな、もう体はいいのか?」
心臓が大きく跳ね上がり、私はぴたりと手を止めた。そのまま、声の方向に目を配る。
普段は上げている前髪を無造作に垂らし、低い位置で後ろ髪をくくっている。つい先程まで眠っていたのだろうか。声にいつもほどの張りがない。射抜くように真っ直ぐな瞳が、夜と朝の狭間の光を受けて、穏やかに揺れていた。
「…………煉獄さん」
「うむ、どうした?」
無意識に彼の名前を呼んでいたことに気がついて、はっとする。
「すみません。何でもありません……いえ、やっぱり何でもあります。あの、先日のお礼をしたいとずっと思っていて。ただ、なかなか会えなくて。良かった、やっと言えます。本当に有難うございました。あと、かなりの粗相をしてしまったようで……大変失礼致しました。ごめんなさい」
思いついた言葉を次々に、脈絡を無視して口にする。沈黙の中、今の彼に見つめられたら、記憶にない出来事を都合良く想像してしまいそうで、恥ずかしくてたまらなくなったのだ。
「実は何が起きたのか全く覚えていないんです。厚かましいお願いだとは思うのですが、あの日のことは忘れて頂けると……」
尻すぼみになる声量。足元の木目に向かって会話を続ける。どうしたことか、顔が上げられない。
「……善処するが、なかなかの難題だな!」
「本当に申し訳ありません……」
「謝らないでくれ。君に謝られると、罪悪感でどうにかなってしまいそうだ」
罪悪感。思いもよらぬ単語に眉をひそめて、濡れた髪の隙間から、そろそろと彼の表情を伺う。
「あの時、君を見て邪なことを考えた。傷ついた隊士に、ましてや柱が持っていい類の感情ではなかった。すまない。許さなくていい。軽蔑していい」
頰が熱を持つ。平常を装い、そっぽを向きながら「しません」と返すも、声が微かに裏返る。
「血鬼術のせいだと聞いています。きっと、煉獄さんもその影響を受けてしまっただけです。それに、私の格好もかなり、その、あられもなかったと……」
「情けないのは承知で、一つ訂正させてほしい。血鬼術の影響がなくとも、俺は君に謝罪していた筈だ。これは俺が一方的に悪い話だ」
左胸で早鐘のように繰り返す鼓動が痛い。言葉の真意を図りかねてしまう。期待をしてしまう。
「……どうせ謝るのなら、抱いてくれて良かったのに」
こぼれ落ちた本音は、中庭の池で何かが跳ねる水音にかき消えた。緩い風が吹く。葉の裏にできた影の薄さが、山際に陽が近づいていることを暗に示す。
――嗚呼、もう限界だ。
「煉獄さん」
呼びかけながら、私たち以外に気配のない歩廊を進む。彼の浴衣の袖口を控えめに摘む。額を逞しい胸元に押し付ける。
一人きりで、密かに餓死していくくらいなら、朝日に灼かれて死んでしまえ。
「――してください」
耳に熱い吐息が吹きかかる。恐る恐ると、控えめに、私の腰へ腕が回った。

俺の部屋に行こう、と告げられるや否や、体が浮いた。
突然変わった姿勢に脳が混乱する。彼の顔がやたらと近くにあるのが見ずとも分かる。背中と膝の裏には筋肉質な感触。
性急な足運びに押され、咄嗟に首元へ腕を絡めれば、彼の寝間着が少しはだけた。肌と肌が直接触れる形になる。ざらついた男の皮膚だ。体から日の匂いがする。
しばらくこのままでいい、と思った瞬間、私が泊まるはずだった数部屋先の敷居を跨ぐ。そのまま足で障子を閉めた。思わず肩口から背後を覗き込めば、「すまない、今は余裕がない」と囁かれる。
真っ直ぐ、中央に敷かれた布団へ下ろされ、対面に彼が腰を落とす。元から掛け布団が多少乱れていたのは、やはり先刻まで寝ていたためか。抜け殻すら愛おしく感じるのは、惚れた弱みだ。
「こっちを向いてはくれまいか」
顎を掬われ、目が合う。瞳の中に映り込む私は、女の顔をしている。
「俺は、俺の意思で君を抱く。改めて問おう、君は俺でいいんだな?」
「煉獄さんじゃなきゃ駄目です」
目の前の満足そうな微笑みは、すぐ熱に侵されて、背景が天井に変わった。
押し倒されたのだと理解するよりも早く、唇を指が這う。皮が厚い、決して綺麗とは言えない、けれど何かを成し遂げた人の手だ。額に落とされた唇が徐々に鼻先へと下がってきて、視線がぶつかる。
そして、待ちかねたように、唇が重なった。微かなしわによってできる隙間すら惜しくて、しっくり来る場所を探すために身動ぎすると、窘めるように下唇を甘噛みされる。
「んっ……」
小さく鼻にかかった声が漏れた。その音に触発されたのか、唇の表面をなぞっていた舌が、口腔に滑り込んでくる。引っ込んだ私の舌を捕まえて、絡める、と思えば吸われる。
背筋に擽ったいものが走り、ほぼ呼気の喘ぎが彼の口に吸い込まれた。
上顎を丁寧に嬲られ、合間に歯の裏を刺激される。私の差し込んだ舌が煉獄さんの八重歯に引っかかる。たじろいだ舌先を、彼の舌が包む。苦しい。けれど、離れ難い。呼吸しようとすると、代償として吐息を持っていかれる。
口の端を飲みきれなかった唾液が伝って、布団に数滴シミを作った。彼の喉が鳴り、「はァ……」と低い声が耳朶をなぞる。
唇が離れても繋がった舌には銀色の糸が絡まったままで。私の耳から首筋にかけてを優しく触っていた彼の指が、鎖骨へと伸びた。皮膚の薄いところを撫でられ、ぴくりと震えてしまう。
壊れ物を扱うのと同じ要領で共襟が寛げられ、障子からぼんやりと差し込む光が肌に反射する
「……君は覚えていない、忘れてくれと言ったが」
乳房と肋骨の境目を親指でなぞりながら、唐突に煉獄さんが切り出す。上半身に向けられた視線をまじまじと感じて、胸の中心部が微かに張った。
「蝶屋敷へと運ぶ道中、君は随分うなされていてな。頻りに抱いてくれと頼まれた。勿論努力はするが、あの時の君を忘れるというのは些か厳しいものがある」
両の手でやわやわと胸を揉まれる。脇の下近くの横乳を通る時に指が強く埋まる。手の平にできた豆の痕が、時折乳頭を刺激して、その度に腰が跳ねた。おそらく本人も無意識なのだろう。狙っていないところが、逆に立ちの悪さを際立たせている。
「そのっ、いきな、あッ、り、くるやつ、やめっ……」
「なに、うわ言だったとはいえ、ようやく願いを聞いてやれると思ったら嬉しくてな」
人差し指と中指で柔らかく突起を挟まれ、肩が上がる。節でごしごし擦られれば、重力に逆らって上に持ち上げられる。何度も何度も。触り方の優しさと、刺激の齟齬に頭が追いつかない。
唇を噛んで、ぎゅうっと目を瞑る。
「こら」
「……ッ!」
ぬるりと胸先を這う、鮮烈な温かさに、私は声にならない悲鳴を上げた。
一番敏感な部分には決して触れないよう、下乳へと舌が降りていく。汗が溜まるところをじわじわと責め立てられ、羞恥心でどうにかなってしまいそうだ。
私の気持ちを知ってか知らずか、余すところなく右胸を舐め上げた煉獄さんは、「君はどちらが好きかな」と目を細めた。
口の中に引っ込められ、潤いを取り戻した舌がぺたりと乳頭に当てられる。弾くように上下へ動く。腰骨から左胸へ伸びた腕が、先刻よりも深く指を埋めて、濡れた親指が先端を押し込んだ。回すようにじわじわと蹂躙される。
「それだめ、で、ンっ、ふっ……!」
勝手に太腿が動き、擦りあってしまう。秘部から流れた体液が、心もとなくぶら下がっている状態の浴衣に水痕を作っていそうで落ち着かない。胸への刺激はあまり好きじゃないのに。背中が浮いて、擽ったい気持ちになってしまうのに。相手が煉獄さんだというだけで、むず痒さを快感に変換する厳禁な体だ。
布団を握りしめていた指を開き、乳房を舐め上げる彼の頭に置いてみる。髪の毛を梳くと、それほど強く結んでいなかったのだろう。髪紐がほどけて、落ちた。上半身を起こし、改めて覆い被さるような姿勢を整えた彼が、「こちらの方が気に入りか?」と微笑む。
選べないので、代わりに口付ける。「んむ」と何か言いたげな様子ごと飲み込んで、恐る恐る舌を侵入させてみれば、厚い舌が応えてくれる。
「……ふっ…………ん、ぁ……」
やってもらったように、口吸いの最中、彼の耳からうなじを撫で続ける。もしかすれば、彼は首の裏が弱いのかもしれない。呼吸の乱れが、言葉にせずともその事実を教えてくれる。くちゅ、ちゅぷ、と響く音が卑猥だ。
鼻の先端を合わせ、安らぐ匂いへ夢中になっていると、太腿の内側に指が触れた。脹脛をなぞり、膝裏を刺激する指圧が、次第に上ってくる。早くしてほしい。待ってほしい。心が定まらなくて、辛い。
頰に溢れた唾液の痕をなぞって、煉獄さんは私と額同士を合わせた。まつげが触れそうなほどに近い。彼が吐き出した空気を私が吸っている。
「……君は、俺の腕の中で数回達していた。運ぶ際の振動すら耐えられない様子だった」
割れ目に指が到達して、ドロドロのそこをゆっくり開いていく。まとわりつく粘膜が、十分解れていることを示していた。浅く、隙間をかき回す。緩い快感の波が連続的に訪れ、奥がきゅうっと疼くのが分かった。
「あの時から、いや……さらに前から、俺の手でしてやりたいと思っていた……君を好いていたからな」
「わ、たしも……」
私だって、私の方が、ずっと前から、貴方のことをお慕いしていました。三回目の口付けに、言いかけた言葉は溶けていった。

秘部を往復する指の優しさが、もどかしく感じてきた頃、下生えの底にある皮膚を濡れた指が這い回り、ぶるりと震える。指に毛を絡めて、遊んでいるようにも思えた。
とその時、敏感な突起の上面をかすられ、腰まわりがびくっと反応する。私のよいところを探っている手だ。トントンと一定のリズムで陰核付近の恥丘を叩かれ、首が仰け反る。触れるか触れないかの境目の強さで、上面くるくる回転するのに合わせて、合わせた唇の隙間から、抑えられない声が出てしまう。
「んんんッ……あ、ぅっ…ん!」
突起の横面を擦る指が、どうしようもないくらい気持ち良くて、はふはふと口が開いてしまう。
「……愛いな」
私の唇をひと舐めした煉獄さんが、手の動きを緩めずに甘く囁く。
「一度、指でイかせておこう」
耳へ舌が這わされ、ぴちゃぴちゃ濡れた音に支配される。陰核を弄り続ける指は、一定の間隔でとんとんと表皮を叩いている。塞ぐものがなくなった口は、もう喘ぐことしかできない。
「あっ、ああ、あぅ……ぁ、ん、れんご、くさ、んんッ、あ……ッ」
「もう、どろどろに熟れているな」
「言わな、ああッ!だめ、いわ、な、んんんッ、でぇ、あ、うぁ、んっんんんッ、あ…ああぁあっ……」
息がつまるような快感に、脱力した全身がくたりと布団に沈む。
「よもや、思っていたより早いな。きっと、相性が良いのだろう」
「……言わないで」
「冗談だ、君は可愛いな」
ぎゅっと抱き締められると、髪の毛が顔にかかり、頰に触れた彼の首筋から汗の匂いがした。嗚呼、どうしよう。幸せすぎて、こういう時になんと言えばいいのか分からない。
肩に回していた手をそっと引き、彼の寝間着の隙間から腹をなぞる。
「……あの、してもらうばっかりで」
「ばかりも何も、してください、と言ったのは君だろう」
くつくつと笑い声がする。
「今日は、俺にさせてほしい。次は二人で決めよう」
「……分かり、ました」
理由に『次』をくれることが嬉しくて、結果的に絆される。無自覚なずるい人だ。
せめてもの意趣返しに、浴衣の上から彼の半身を片手で包んだ。布越しでも分かるくらい熱くて、かたい。突然の刺激に驚いたのかぶるりと震えたそこは、柔く揉み上げると、びくびく筋張るのが分かった。
「……君」
上半身だけ起こした煉獄さんが私の首筋に噛り付いた。かぷ、と立てられた歯は痛くないが、咀嚼されているような、なんだかおかしな気持ちになる。じゅっと音を立てながら同じ箇所に吸い付かれ、喘ぐ。
「しばらく湯浴みする時は気をつけた方がいい」
こつんと額同士をぶつけられ、紅蓮の華のように、耳まで赤くなる。気がつけば、彼の浴衣が先ほどまでよりも乱れていて、反り返り、昂ぶった陰茎は先走りで先端を濡らしていた。裏筋に伝う体液がぽたぽたと重力に引かれている。張り出たカリと、たぷたぷ揺れる睾丸に生唾を飲み込めば、意識の端にあった秘部へ、また指があてがわれた。
一度達したそこは柔らかく、入り口をくるくるとかき回されると、中へ中へと強請る。
いきなり指が二本入り込む。違和感はなく、まだ足りないと締め付ける。腹側のある部分で関節をわずかに曲げられ、思わず声が漏れた。
「ぅあ、ん、んぅ、あっ……ん、そこ、ま、待って、ぇ、あ」
「痛いのか?」
「ちが、そうじゃ、ん……な、あ、んんぁ……っ」
「良かった」
手は止まらず、とんとんと陰核の時と同じように一定の間隔で中をほぐしていく。もう一本増えたかもしれない。痛みがないから分からない。
安定した気持ち良さに高められていると、入り口上の突起にぬるりとした感触が走った。
「え、あっ、な、んっ……急に、ぃ、も、んんぅ」
敏感なそこを口に含まれて、いいようにされる。剥かれて裏側を弄られる。そこは駄目なのに。自分でする時も良すぎて触らないのに。唇で挟まれふわふわと甘やかされる。吸われ、そっと噛まれ、つつかれ、私はひっきりなしの嬌声を余儀なくされた。
尿道まで降りた舌先が、膣の入り口も。舐め上げて、指の代わりに挿入される。
「あっあっ、あっ、ああぁんっ!も、あう、あ……っ!あァ……ッ」
仕上げに秘部へ息を吹きかけられ、刺激らしい刺激ではないその熱に、達させられてしまった。
荒い呼吸。私の汗と、私の腹に落ちる彼の汗が混じって香り立つ。何度目か分からない口付けをしながら、彼の陰茎が割れ目に触れた。数度滑らせ、その度に腫れ上がった突起がぴくぴくとむず痒く膨れる。
「少しでも痛みを感じたらすぐに言ってくれ」
前置きの後、私の膣口と鬼頭も口吸いをする。空気と水が混ざり、こぽっと音が爆ぜた。お互いに深く息を吸い、吐き出す。 そして、腰がゆっくりと動き出す。
きつい。正直、痛い。でも痛いのが嬉しい。止めないでほしい。カリがみちみちと肉をかき分けていく感覚が鮮明であればあるほど、この夜をいつまでも忘れないでいられる。
焦れるように少しずつ進み、中ほどまで入ったところで煉獄さんが呻いた。そうだ、辛いのは彼の方だ。私ばかりよくしてもらって、こんなに溶けているのに、彼はまだ欲を埋め込んだばかりで、その動きすら私を気遣っている。
全てが入る。互いに息をつく。なんだかおかしくなって、目を合わせて笑う。
「動いて大丈夫ですから」
「いや、しばらくこのままでいよう。慣らした方がいい」
「……じゃあ、言い方を変えます。動いてください。動いて欲しいんです」
橙色の火を灯す瞳が、一瞬欲に眩んだ。
「君ってやつは……」
その後は言葉にならなかった。
大きな骨ばった手が私の腰を掴み、逃げられないよう固定する。もう片方の手は私の指に絡められ、布団に縫い付ける。
熱が引き抜かれ、再度入ってくる。その速さに、膣内の肉が吸い付きながら引きずられ、あまりの気持ち良さに頭がぐらぐらとした。声が出ない。腹が震えて、呼気だけの喘ぎがはくはく唇から出て行く。
奥を突かれる。そこはまだ慣れていない場所だ。気持ち良さよりも違和感の方が強い。
「ぐ、っ……ん、ぁ……」
けれど、快感を享受する彼の顔をまだ見ていたい。震える腕を伸ばして、目の下に親指を這わせる。
私の中で、彼がびくびく脈打った。互いの体温が馴染んで、どこまでがどちらなのか分からなくなる。浮き出た血管を肉壁が追いかけ、きゅうきゅう収縮した。
「……外に出す」
余裕のない掠れた声。
二人の下生えが絡まり、蜜と絡まり合ってぐちゅぐちゅと鳴った。前後にねじ込む動きから、ずらすような上下の動きになったことで、陰核に毛が擦れて蒸れる。
「……んっ、ぅあ、はぁ……っ」
直接的な刺激に、私も声が漏れる。ずるりと陰茎が抜かれ、腹の上に温かい液体が落とされた。そっと触れて白い液体を弄ぶ。粘度が高い。指に纏わり付いて臭う。
横に寝転んだ煉獄さんを見やると、彼も息を整えながらこちらを覗き込んでいた。前髪が顔にかかる。あどけない、子どもみたいな表情。この人、まだ二十歳なんだ。肩に手を回して抱き締める。汗ばんだ皮膚が離すまいとひっついて、嬉しい。目を瞑ると、穏やかな吐息が耳元にあった。
好きだと思う。守りたいと思う。この尊い人の拠り所や、居場所を守りたいと、強く感じる。
願わくば、彼の告げた「次」が優しい呼吸の中で訪れますように。

数週間後、彼から文が届いた。次の任務場所は特定の土地ではなく、とある汽車なのだという。初めての文に心が踊る。立ち寄った店で筆を借り、すぐに返事を出した。
以来、便りはまだない。