fan fiction

ダイヤプラス 不憫な先輩

え、俺は選んでないけど。目の前の男が、薬指で鈍く輝く輪を見ながらそんな台詞を吐いたので、危うく口に含んでいた飲料を吹き出しそうになった。高校時代から同じ釜の飯を食べ続けて三年、卒業後そのままプロに進んだ先輩と、大学へ進学して野球に取り組んで…

ダイヤプラス 白の便り

時は大晦日、午後九時。手元には鴨南蛮、目線は公共放送の歌番組、腰から下は実家から持ってきたこたつに埋まるという最強の布陣。しかし、体と裏腹に心は冷え冷えしている。なぜならば、結婚して初めての年越しだというのに一人きりだから。画面の向こうで、…

ダイヤプラス 都合の悪い男

御幸いねえじゃん。隣の席で酒を煽っていた仲谷が唐突にそんな台詞を吐き出し、周囲を見回した。俺もつられて店内に視線を配り、図らずもその意見に裏付けをとってしまう。南国で行っていたトレーニング中、交流のある他球団の選手とばったり遭遇した。打ち合…

ダイヤプラス 水も滴る

じゃあ、うち来る?一週間前のやりとり。きっかけは先輩からもらった大量のハーブを消費するのが大変だという話に、胃袋だけなら貸しますよと返答したこと。マジ? と顔文字もなく帰ってきたメールには、冒頭の一文が続いていた。付き合って一年になるけれど…

ダイヤプラス 確信ヒロイン

絶好調の彼氏を画面越しに見つめ、私は唇を噛み締めた。本日の成績、一打席目からレフト前にヒットを飛ばし、三打席目ではセンターへの本塁打。そして、九回表の四打席目もフルカウント。現在、ファールで粘っている。先日の試合で見せていた連続凡退や厳しい…

ダイヤプラス レンズの先

「御幸! 御幸先輩!」やたらはしゃいだ声が響く。こいつはいつになったら年相応の落ち着きを持つのだと半ば呆れつつ振り向けば、わはは! 今日も引っかかりましたね! と豪快な笑いとともにスマフォの背面で捉えられた。「ほらほら! 週刊沢村の時間です…

ダイヤプラス 占術に手心

「このあたり、春になるとタンポポがぶわーって咲くんですよ」 日の暮れかけた、橙色に染まる小道。隣を歩く彼が嬉々として告げた。「小学校の帰りなんですけど、綿毛飛ばし競争したりとか!」「想像の十倍くらい穏やかな遊びだね」 思わずくすくす綻んでし…

ダイヤプラス 少女のロマンス

好きな人から告白されたい。叶うのならば、ドラマや漫画のように。そう、ロマンチックに。あの芸能人と奇跡的な出会いをして。いつも教室の片隅で文庫本を読んでいる彼に呼び出されて。対象はそれぞれにしろ、誰もが一度は考えたことがあるはずだ。かくいう私…

unmeasured How far we’ve come

彼女の所在を尋ねた時の、嫌な、とてつもなく嫌な予感が、じっとりと背筋にこびりついている。一度に作れる復活薬には限りがあると聞いていたし、この場に乗組員が全員揃うとは思っていない。科学の要である千空、ものづくりのキーマンであるカセキ、危機察知…

unmeasured あなたが名前を知る後に

杠ちゃんと大樹君の披露宴は、当事者二人と同じくらい、彼らと日々を共にした全員が願っていた光景だった。人目を憚らず涙する仲間を見て、もらい泣きする者も少なくなく、あたりが笑いと感動に包まれる。ところで、そのお祭りはなんと明日にもまたがるわけで…

unmeasured うしお

「龍水君って、時々潮ちゃんみたい」がくすくすと笑いながら、俺の肩へ体重をかけて立ち上がる。宝島から日本へ帰還後、片足が不自由な彼女が気になり、移動の気配を感じるたび声をかけた。もちろん恩着せがましくするつもりは毛頭ないため、あくまで自然の範…

unmeasured それは最後に相応しい

雲一つない新月の夜。東には数千年前と変わらず、天の川が伸びている。織姫と彦星を隔てる長い長い川だ。高校時代、地学の先生が「天の川は銀河を内側から見た姿」と言っていたっけ。内側とは言っても、太陽系は中心からやや外れた位置にあるらしく、銀河をぐ…