fan fiction

Prayer 5章③ 平田彰宏

*東体大の学生とこのまま今後もかち合うのは得策でないと判断した清瀬は、午後の練習を終えてからバンに乗り込み、帰路に着く前のと二人で周辺探索に出かけた。その前段、どちらが運転するか決めるじゃんけんの白熱具合はなかなかで、住人たちも固唾を飲んで…

Prayer 5章② 榊浩介

*──お前なんかより、俺はずっと箱根を走りたい。チームに対して思い入れなんかないくせに。自分の力をただ誇示したいだけのくせに。運よく天才でよかったな。どこにも属することなく、迷惑をかけることなく、一生一人で走っていればいい。もしくは、ぬるま…

Prayer 5章① 城太郎

*「なんで山なんか選んだ!」「なんでも! 商店街のバ、バッティングセンターの岡井さんが、別荘を貸してもいいって! ハイジさんに!」ニコチャンの悲鳴に、舌を噛みそうになりながら神童が答える。ただでさえ危なっかしい清瀬の運転に、自然の凹凸まで加…

Prayer 4章⑤ 岩倉雪彦

*六月上旬──とある週末。鶴の湯のモダンな浴室にはいつものように熱気がこもっていた。異なるのは、その熱がアフリカのサンバを思わせる陽気さを伴い、蛇口から継ぎ足される湯の跳ねる音ですら、楽しげに響いていること。それもそのはず。本日行われた喜久…

Prayer 4章④ 柏崎茜

*結局、皆が布団に入ったのは時計の針が午前一時を回った頃であった。が、いつものルーティンをこなすべく、六時前には清瀬を除く全員が竹青荘前に屯する。その中にはの姿もある。葉菜子の学校行事が続くため、ここ数日朝練にも付き合ってくれているのだ。慣…

Prayer 4章③ 坂口洋平

*前回の反省を生かし、喜久井大記録会にはの運転で向かうことになった。素知らぬ顔で助手席に乗り込む清瀬を総出で引きずり下ろし、ナビ係としてユキを突っ込む。清瀬が隣に座っていても、いざという時なんの役にも立ちやしない。東体大記録会への道中で全員…

Prayer 4章② 城次郎

*「──嘘⁈ あいつそんなこと言ったの?」「まじかよ、あいつ!」王子から端的になされた報告について、双子が口腔に白米を含んだままコメントを残す。清瀬が「行儀が悪いぞ」と指摘を入れるが、前段の衝撃で注意は耳に入っていない。現在、食堂の席につい…

Prayer 4章① 平田彰宏

*大学中庭のベンチに腰掛け、生協で購入したパックの牛乳をすする。何をしなくても腹は減るものだ。舌に残る乳独特の膜をうざったく感じながらニコチャンはため息をつく。七十九キロ。昨晩、鶴の湯で乗った体重計の針が示した重量。長距離選手として、トラッ…

Prayer 3章⑤ 蔵原走

*足元に画用紙で敷かれた道があるようだ。一歩を踏み出すごとにじわり絵の具が滲み、大きく広がる。しぶきに足を取られ、厄介で仕方ない。上京してから、この一ヶ月間で出会った人々。そんな彼らの声が取り巻く水滴の中で反響している。痛いくらいに、眩しく…

Prayer 3章④ わたし

*──死ぬかと思った。バンの助手席より命からがら降り立ったは、そのまま地面に膝をついた。わざわざ彼女の家まで迎えに訪れた清瀬にお礼を言い、レンタルバンへ乗り込むまでは順調だったのだ。しかし、走っているうちになぜかセンターラインへ近づいていく…

Prayer 3章③ 杉山高志

*食堂に、八人分の「はあ⁈」がこだました。「だから今日の夕方五時、玄関前に集合だ」その叫びを引き出した張本人は、実に清々しい居住まいである。「今まさに走って来ただろうが」「朝のジョグは肩慣らしだ。今日から夕方の本練習もはじめる。本格始動だ」…

Prayer 3章② 榊浩介

*「おーい! こっち! すごいすごい! はやーい!」多摩川の河川敷で、ピンク色のジャージに身を包んだ少女が跳ねている。堤防の上からその様子を捉えた榊は、スピードを緩めて坂下を覗き込んだ。声の方向に向かって一人の青年が駆けていく。そのフォーム…