novel

unmeasured あなたが名前を知る後に

杠ちゃんと大樹君の披露宴は、当事者二人と同じくらい、彼らと日々を共にした全員が願っていた光景だった。人目を憚らず涙する仲間を見て、もらい泣きする者も少なくなく、あたりが笑いと感動に包まれる。ところで、そのお祭りはなんと明日にもまたがるわけで…

unmeasured うしお

「龍水君って、時々潮ちゃんみたい」がくすくすと笑いながら、俺の肩へ体重をかけて立ち上がる。宝島から日本へ帰還後、片足が不自由な彼女が気になり、移動の気配を感じるたび声をかけた。もちろん恩着せがましくするつもりは毛頭ないため、あくまで自然の範…

unmeasured それは最後に相応しい

雲一つない新月の夜。東には数千年前と変わらず、天の川が伸びている。織姫と彦星を隔てる長い長い川だ。高校時代、地学の先生が「天の川は銀河を内側から見た姿」と言っていたっけ。内側とは言っても、太陽系は中心からやや外れた位置にあるらしく、銀河をぐ…

unmeasured あなたが切符を切る前に

「セーフティがないしね。万が一があった時、私が龍水君の後ろ髪になるわけには、って思うし」まだ癖はあるものの、初期よりも飲みやすく改良されたワインに口をつけ、ははっきりと告げた。「私は、龍水君の妥協になりたくない」司帝国時代からの親友として、…

unmeasured It’s always you

空の色を写す、青いビー玉のように輝く海に、装い新たなペルセウス号が揺蕩う。旅立ちの日だ。世界一周組、北米組、見送り組と先日三つに分けたグループが入り混じり、しばしの別れを惜しむ。堪えきれず、涙を流す者もいる。次にいつ会えるのか、明確な答えが…

unmeasured 秤にかける

という人間について考えると、出会い頭に抱いていた想像と、相反する点が多々あることに気づく。たとえば、平均女性よりもやや高い身長に、すらりとした肢体を併せ持っている。その一方、非常に食べる。マグマよりも食べるといえば、その大食ぶりが伝わるだろ…

unmeasured 裸の劣等

一般的な核家族を思い浮かべて、それを標準よりも貧しくすればおおよそ私の実家になる。普通の学校の、普通の学生。将来の夢は都庁の職員。抜群の運動センスもなければ、博識でもない。絶世の美女でもない。大きな幸福もない代わりに、大きな不幸もない。せめ…

unmeasured 理想的なトロッコ

「たとえば、貴様に想い人がいるとしよう」北米へ向かう船の中、突然の龍水ちゃんの言葉。聞き耳を立てていた俺、ニッキーちゃん、羽京ちゃんは揃って顔を見合わせた。きっかけは至って単純だ。星を見にきたニッキーちゃんとちゃんが、北極星の位置を確認しに…

unmeasured 名前をつけるなら

彼女を救出したのは、科学王国がイバラに勝利した二日後のことだった。一時的に船を占拠された経緯より、ペルセウス号の中を捜索したところ、予備の資材置き場に憔悴しきったを見つけたのだ。島内の牢に入れられているのでは、と予想していたが、イバラは島民…

unmeasured 彼女の矜持

「それで、君らは俺のために妖術で働くわけだけどさ」実はもう一つあるんだよね。仕組まれたディールの席に着いていたモズが、最後の最後、去り際に切り出した条件。続いた台詞にあのゲンでさえ一瞬黙り込んだ。ピリついた空間を問答無用で切り裂き、千空が交…

unmeasured 彼が恋愛できない理由

世はまさに大恋愛時代!今や遠い過去となった『現代』で、耳に馴染んだフレーズが脳裏にもじられる。私は、そっと茂みに身を潜めた。夕方とはいえ、葉が重なる森の中は薄暗い。とはいえ、僅かに差し込むオレンジが、間接照明のような役割を果たし、不気味とい…

unmeasured 推し量る距離

人手が足りない。クロム君が見つけた採鉱場所から、船乗り場までの経路を思い浮かべ、私は頭を抱えた。悩みの種はおよそ十日前へ遡る。千空君が洞窟内にトロッコを整備すると切り出した時だ。クロム君の発見にただ感嘆していた私は、その宣言を一呼吸おいて理…